【スタンフォード哲学辞典】The Stanford Encyclopedia of Philosophyで学ぶ哲学【哲学好きな素人へ】

哲学(Philosophy)は古典ギリシャ語で「知を愛する」を意味する言葉を語源としています。哲学というと好き嫌いがはっきりと分かれる分野ではないでしょうか。

抽象的でよく分からない、何の役にも立たない、むしろ生きる上で有害…等々様々な言われようがあるかと思います。ちなみに私は素人ながら哲学(特に現代思想)は大好きです。私にとって哲学は「世界のありようの解釈」であり、人が人として生きるためには必須ではないかと思っています。

哲学や思想関連の書籍を読むのは好きなのですが、1冊1冊が中々の重さであり、そう気軽に読むことができません。また読めたとしても本当に自分が理解できているのかと言われると、何とも言えません笑

そんな興味があるだけの、ただの素人の私ですが、最近素晴らしいサイトを見つけました。スタンフォード大学が運営しているThe Stanford Encyclopedia of Philosophy (スタンフォード哲学百科事典)、略してSEPです。本記事ではSEPの魅力と使い方をご紹介します。

実はエンジニアに身近な哲学

SEPに触れる前に、なぜ突然哲学の話になるのか触れておきましょう。先述のように、哲学とは「世界のありようの解釈」そのものであり、哲学者だけが行う学問ではありません。

大学受験で学ぶ哲学は暗記の連続で面白くないものかもしれませんが、エンジニアとしてコンピュータサイエンスを学んだことのある方からすると、少し見方が変わるのではないでしょうか。

例えば、チャットだけで人かコンピュータを言い当てるチューリングテストには、コンピュータが知性を有しうるかという哲学的な問いが隠されています。また論理ゲートを構成要素とするコンピュータは、哲学の一分野であった論理学(のさらに一分野である記号論理学)の発展がなければ、開発されることはなかったでしょう。

学問が役に立つべきとは全く思いませんが、どんな学問でも役立つようにしてくれる人が出てくるのが人類の面白いところです。

日常我々が使っている応用的な技術から哲学の存在を感じることは稀ですが、実は基盤技術には哲学的な要素が多分に存在しています。これは他の分野にも言えることで、例えば現代数学の不完全性を証明した「ゲーデルの不完全性定理」は数学、哲学両方の要素が含まれています。(数学と哲学を分けるのはナンセンスかも?)

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長々と書きましたが、私は楽しいから哲学を学んでいます。しかし実利に興味がある方にも、哲学は有用なので学ぶことをお勧めしたいです。

スタンフォード哲学百科事典(SEP)とは

The Stanford Encyclopedia of Philosophy

スタンフォード哲学百科事典(The Stanford Encyclopedia of Philosophy; SEP)はスタンフォード大学が管理しているオンライン哲学百科事典です。2018年3月の時点で1,600以上もの記事があり、今も新しい記事が四半期に一度追加されています。

SEPは1995年の9月、スタンフォード大学言語情報研究センターのセンター長であったジョン・ペリーの発案から生まれました。その発案を現在のオンライン百科事典の形にしたのが、現編集長の哲学者、エドワード・ザルタです。

記事は全て英語ですが、内容はとてもまとまっていて読みやすいので、ぜひ一度ご覧ください。

SEPの編集モデル

SEPに投稿された記事は、編集部の専門家による査読を経て、オンライン上に掲載されます。SEPで一度投稿された記事は、その後も新しい研究成果が出るたびにアップデートされます。ここが普通のジャーナルとは異なる点です。

年4回(季節ごと)新規記事の追加と、既存記事の更新(もしあれば)がなされます。

コクラン

余談ですがこのコンセプトは、医学の分野において根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine; EBM)を推進しているコクラン (Cochrane)の仕組みと似ています。

Cochrane is a global independent network of researchers, pro…

コクランは信頼できる医療情報の発信を目的としている、国際的な組織です。システマティック・レビューという手法を用いて、医学における根拠となるような情報を提供しています。

システマティック・レビューはざっくり言うと、既に発表されている論文(主にランダム化比較試験という手法で行われた研究)をかき集めることで、より信頼できるようなエビデンス(根拠)を作る手法です。その性質上、ある時点におけるシステマティック・レビューで示された見解が、新たな研究の発表により覆るということが起こりえます。

通常の医学ジャーナルでは、一度投稿されたシステマティック・レビューがアップデートされることはありません。しかしコクラン共同計画ではSEPと同じように、一度投稿された記事(システマティック・レビュー)は定期的に更新され、up-to-dateな根拠を提供してくれるのです。

SEPの料金

先述の通り、SEPは無料で誰でも閲覧することができます。しかし各記事のPDF版をダウンロードするにはFriends of the SEP (SEP友の会?)の会員になる必要があります。

SEPのメンバーシップ

SEPのメンバーには以下の3つの種別があります。

  • アソシエート: $10/年 1日最大記事までPDFダウンロード可能
  • スチューデント: $5/年 1日最大記事までPDFダウンロード可能
  • プロフェッショナル $25/年 無制限にPDFダウンロード可能

3000円弱を支払えばいくらでも記事のPDF版をダウンロードできるのですが、そもそもWeb上で無料で公開されているものなので、加入するかはお好みで良いと思います(会員登録はこちら)。

PDF版の注意点

私はPDFをダウンロードしてPaperpileで管理したかったので、$25支払いプロフェッショナル会員となりました。

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PDF版は概ね快適で、会員になって良かったと思っています。しかし、お伝えすべき難点もありました。

メタデータのないファイルがある

PaperfileにPDFを入れるとメタデータを読み取って著者情報や出版年が自動で登録されるのですが、2割くらいの頻度でメタデータのないPDFに遭遇します。この場合自分で各種情報を手打ちしなければいけないので、結構な手間となります。

リンクが機能しない

Web版では他の記事へのリンクや、目次から各項目へのリンクが機能しています。しかしPDF版ではそれらのリンクが全く機能しないのです。他記事へのリンクが機能しないのは原理上仕方がないとして、せめてPDF内のリンクは機能するようにしてほしかったです…。

面白そうな記事

折角なのでいくつか面白そうな記事をご紹介します。

Turing Machines

言わずと知れたチューリングマシンについての記事です。

Japanese Aesthetics

「日本の美学」についての記事です。Mono no Aware(もののあはれ)やWabi/Sabi (わびさび)などの概念が英語で開設されています。海外の方に日本のことを説明するのに役立つかも。

Time Travel and Modern Physics

「タイムトラベルと現代物理」についての記事です。これは哲学なのでしょうか…?

まとめ

本記事では読み物として無料で読めるオンライン哲学百科事典、SEPをご紹介いたしました。英語が苦手という方も、翻訳サイトのDeepLを片手にぜひご一読ください!